コロナはまだまだ続きます    (34 船曳孝彦)

東京を中心にまだまだ新規患者が続いています。東京では20~60人/日で経過し、夜の街の感染が1/3~2/3を占めていますので、予想よりはやや多い原因でしょう。前にも書きましたが、無症状感染者がゴマンといるのですから、新規に感染しても不思議ではありません。COVID19に特効的な薬はまだですし、ワクチンももう少し時間がかかるでしょう。街中へ外出するときは、混雑した電車・バスが最も危険だと思いますが、とにかく三密を避け、ソーシャルディスタンス(実際は2Mは無理なことが多いですが)を守り、マスクをし、なるべく他に手を触れないようにし、なおかつ嗽い、手洗いを頻繁に行って下さい。夜の街は禁です。

これまでを振り返ってみますと、そもそもパンデミックに広がる感染症に対する十分な覚悟がないまま政府対策会議が帰国者センター・保健所という流れで検査し、一人の感染者からどのように感染者が広がるかの追及をして国内の感染を明らかにしてゆこうとしました。それ自体間違いではなく、人の往来が多くなければ十分な把握が出来たかもしれませんが、予想を超えたため、検査を受けられない患者が続出することとなった。それを受けて専門家会議としては対策の変更をもっと強く上申すべきでした。しかし専門家会議自体が根本的改革を忌避し、絞り込んだPCR検査対象を広げることになりませんでした。発熱患者が検査に殺到して医療崩壊を来すことのないようにとの配慮といいますが、結局医療崩壊は起こっており、むしろ最初からPCR検査を広くやっていた方が混乱も少なかったと思います。他国と比べて1桁以上の少なさです。

PCR検査を行政検査と位置付けたことに問題があり、このため検査法も、検体運搬まで法に規制されることとなりました。後に簡易法(これは日本で開発されていたのに国内では正式に認可されていなかった)や唾液で検査するなどの改善を取り入れるのに大変な手間がかかってしまいました。それどころか保健所、国の定めた検査センター以外でのPCR検査データは基本的に認めようとしませんでした。陽性なら登録せざるを得ないにしても、陰性例の扱いは結局判然としないままです。検査の遅れにしびれを切らし、大学や、医師会で独自に検査をしたところでは、検査費用が保険効かずの有料ないし病院持ち、そのデータはパソコンでなくFAXで送り、都道府県で「採用してやるか」という状態でした。日本の死亡率は低いことは確かですが、分母の分からない分子だけのデータで本来死亡率は出せません。それなのに専門家会議副座長が国会で「感染者はこの10~20倍いるかもしれない」などと口にしてよいのでしょうか。

法に基づいた対応と、疫学的根拠(数理疫学に偏った)での判断という原則から一歩も出ようとしない専門家会議の態度に、大いに反発を感じていたところ、昨日突如として担当大臣から専門家会議は廃止するとの発言がありました。国民は政府・専門家会議は一体となって取り組んでいてくれたものと信じていたのに、一体どうなっているのでしょうか。その後の専門家会議座長の発言にも驚きました。評論家のような発言で、まるで反省の意を感じませんでした。今後は別組織としての有識者会議が任命されるようですが、見事なバトンタッチは期待できそうにありません。

問題は第2波対策です。禁止事項が次第に消えてゆきますが、第2波は必ずと言ってよい程海外から押し寄せるでしょう。昨日の報道では、第1便による入国者30人にPCR検査を行い、結果判明まで2週間ホテルに待機させようというものでした。その後の便については未定とのこと。大変な手間と費用が掛かることは分かっていますが、正常に復帰することを考えると、1日何万人もの入国者・帰国者を迎えます。大量の宿泊施設を準備しなければなりませんし、PCR検査も大量に施行(十分可能です)しなくてはなりません。こうしなくてはオリンピック開催など消え去ってしまうでしょう。

さて医療崩壊の問題です。厚労省は再拡大に備え、病床確保と外来新診療体制樹立を7月までに策定せよと都道府県に指示しました。一般病院では、医師数、医療スタッフ、医療器具並びに消耗品(マスク、ガウンなど)、病床及び診察スペースなどなど、全てが不足して「医療崩壊」ぎりぎりの線上にあると思います。それに加えて、感染症診療上のコストに十分な考慮がなされていない、一般病院でPCR検査しようにも病院持ち出しの経費となる、コロナに人手をとられて、予定手術が出来ない(延期)、病院にはコロナ患者が溢れているだろうからと、一般患者が通院拒否、延期などが経営的な「医療崩壊」を起こしています。コロナ用に何10床、あるいは100床以上の空きベッドを用意したものの、コロナ患者数が峠を越えてくると直接減収につながっています。患者数減少と手術症例減少が重なり、病院の収益は非常な落ち込みです。永寿病院などで職員の給料カット迄始まっており、医師、看護婦の退職者が出始め、休業、閉院する病院が出てきています。

厚労省はコロナが始まる前まで、公的病院のベッド数を削減しろ、出来なければ公立・私立の開設者お構いなしに合併せよと通達を出し、病院側から反発があったばかりです。ベッド数など、余力を持っていなければ、このようなパンデミックばかりでなく、巨大震災、巨大噴火、大水害などのとき、対応しきれないことは自明のことと思います。

医療関係者に感謝の拍手を送ろうという国もありますが、我が国の現況はとても拍手だけで済まされない状況です。病院側が耐えられているうちに国は手を打ってほしいものです。沈没する船からネズミが逃げ出すと言います。あるいは拍手の国でも同じ事が起こっているのではないかと思います。第2波の来ないうちに新しい医療体制が必要です。