妙高・火打 山行記  (51 斎藤邦彦)

妙高山周辺はスキー場には何回か来たことはありますが、妙高山には登ったことはありません。今回登った「妙高山・火打山」は50年卒業の丸満さん、増田さん、実方さんの3人が今年のゴールデンウィークにアイゼンで登った記録がfacebookにあり、紅葉の季節には行こうと同期の五十嵐君と計画していたものです。健脚の登山者は一日で歩くとも言われる行程ですが、我々はのんびり登山が信条なので3日かけて歩きました。

◆1日目◆10月8日(日)◆歩程3時間35分◆

東京駅7:20⇒(新幹線かがやき503号)⇒8:43長野駅⇒9:00⇒(レンタカー1時間30分)⇒10:30笹ヶ峰登山口(1300m)10:50⇒(1時間)⇒11:50黒沢12:00⇒(1時間40分)⇒13:40富士見平14:30⇒(50分)⇒15:20黒沢池ヒュッテ(宿泊)

・深田久弥が日本で一番美しい高原の一つと称した「笹ヶ峰高原」から入山、天候は快晴。登山口からほどなくブナ・ミズナラ・ダケカンバ・イタヤカエデ・ナナカマド等の紅葉が進む樹林帯に入る。足元の熊笹とのコントラストが美しい。

・約1時間で豊かな水量を誇る黒沢の渓谷に架かる橋を過ぎ、名物「十二曲り」の急坂に取付く。「十二曲り」は登山道の名前としては有名だが思ったほどでもないと油断をしていたら、この上に続く「胸突き八丁」は過酷な急坂の難所で苦戦を強いられる。喘ぎながらやっと富士見平にある高谷池分岐。ここからは熊笹のなだらかな草原歩き。粘土質の山道はぬかるんでいるところが多くスパッツを着けてはいたが靴はどろんこになってしまった。私が30年前に赴任していた熊本ではこの状態を「じゅったんぼ」と言っていたのを急に思い出した。途中からは木道が整備されており黒沢池を見送り黒沢ヒュッテに到着した。

黒沢池ヒュッテは八角形のドーム型の優美なデザインの瀟洒な三階建ての建物だが従業員の応対が横柄であるとブログに散々酷評されている山小屋である。到着してみると小屋の管理人は何とアメリカ人に代わっており、ブログに書かれていた人物とは違う様で少し安心する。食事はカレーライスで特に美味しいというものではない。水が不足気味のため飲み物が高く缶ビールロング1000円、ペットボトルの水500円など今まで私の経験した山小屋の中では最高値である。

宿泊者の中に外人女性が二人いた。オランダ人とオーストラリア人の二人はお互いに連絡しあい自国から日程を合せてここにやってきたという。この二人昨年は同様にして上高地に来たというから日本の山に相当の憧憬を持っているらしい。我々はあらん限りの乏しい英語力で会話を続けていたがオランダ人の方は日本語が流暢であることが分かり話も弾んだ。日本の外国人向けの観光資源もまだまだ未開発のものが多いと感じる。

◆2日目◆10月9日(月・祝)◆歩程4時間35分◆

黒沢池ヒュッテ6:00⇒(1時間)⇒7:00長助池分岐7:15⇒(1時間30分)⇒8:45妙高山山頂10:00⇒(1時間)⇒11:00長助池分岐11:20⇒(1時間分)⇒12:20黒沢池ヒュッテ

ヒュッテの朝食は名物のクレープ、だが生地だけしかなくこれにジャムを塗って食べる。食べ放題で五十嵐君は7枚も食べていたが具材が入っていないクレープはそんなに食べられたものではない。

早々に出発、朝から快晴。今日は黒沢池ヒュッテから妙高山アタックの行程。アタックザックに水、雨具とラションを入れて出発。大倉乗越まで快調に登ると眼前に妙高山の威容が迫る。妙高山は昨年の11月に湊かなえ原作の「山女日記(工藤夕貴主演)」がNHKプレミアムドラマで放送されたのを見た。それぞれに複雑な人生を持った人たちが登山ガイドの工藤夕貴と山に登るというストーリーだが転落しそうになる女性をザイルで確保するシーンがここ大倉乗越だったかと思う。余談だが「山女日記」の続編が近々テレビドラマ化されるらしい。

大倉乗越から一旦長助池分岐まで下り妙高山に登り返すが、この登り返しの1時間半がかなり厳しい。すれ違う下りの人から励ましてもらったがこの言葉が最高に気に入った。「もうつらいところは通り過ぎていますからね!」と、まるで胃カメラ(内視鏡検査)の医者のようで思わず吹き出してしまった。その後の登りの苦しそうな人には私がこの言葉をかけ続けた。

妙高山の北峰・南峰とも登頂したが北峰は頂上が広く多くの登山者が憩いを楽しんでいた。この日は快晴で西に白馬三山から鹿島槍に至る後立山の山並みが、その奥に剣岳・立山が望めた。遠くにはどこから見てもわかるランドマークの槍ヶ岳や富士山も見ることが出来た。頂上でラションを摂っていると隣の7~8人グループから私のふるさとの強烈な「岡山弁」が炸裂し始め思わず「私も岡山です。」と参加してしまった。詳しく聞くと私の実家の近くの人も居た。

黒沢ヒュッテまで戻り昼食、何もすることがないのでまた飲んでしまう。小屋の滞在時間は長いが同宿の人達は話好きが多く退屈することはない。これも最近の登山ブームの大きな特徴の一つである。昨日の宿泊は新館だったが今日は本館二階に入れた。二階と三階は吹き抜けになっていて八角形のフロアに放射状に布団を敷いて寝る。案外広くて快適である。

◆3日目◆10月10日(火)◆歩程6時間20分◆

黒沢池ヒュッテ5:50⇒(1時間10分)⇒7:00高谷池ヒュッテ(荷物デポ)7:10⇒(1時間20分)⇒8:30火打山山頂8:30⇒(1時間)⇒9:30高谷池ヒュッテ(昼食)10:30⇒(45分)⇒11:15富士見平11:20⇒(50分)⇒12:10黒沢12:20⇒(40分)⇒13:20笹ヶ峰登山口13:50⇒(レンタカー1時間30分)⇒15:20豊野温泉「りんごの湯」(026-257-6161)15:50⇒(40分)⇒16:30長野駅17:03⇒(かがやき510号)⇒18:28東京駅

前日と同様、クレープの生地にジャムを塗って朝食は終わる。天候も何とか崩れていないので早々に出発。茶臼山、天狗の庭、雷鳥平を過ぎて頚城三山の最高峰火打山山頂へ。天候に恵まれ頂上からは北に日本海、南には高妻山、乙妻山その左には黒姫山をはじめ北信五岳が峰を連ねる。西には焼山、雨飾山、遠くには北アルプスもうっすらと見える。

早々に下山を開始し高谷池ヒュッテの前でコンロを点けラーメンとアルファ米で昼食、飲料水に関しては高谷池ヒュッテは黒沢池ヒュッテと同じような地形条件だがこちらは100円、ちょっとどうかと思う。富士見平から十二曲がりへ来た道を降りるが2日の間に紅葉が進んで見事な景色に変わっている。まさに黄金のアーチの中を快適に進み無事に笹ヶ峰登山口に到着する。

帰りは車で豊野駅前の豊野温泉「りんごの湯」に立ち寄る。ウェブサイトにはりんごが浴槽にたくさん浮いている写真が載っているので行ってみたが、りんごは入っていなかった。聞けば5のつく日即ち毎月5日、15日、25日限定だそうである。でも広々としたいい温泉で露天風呂も楽しめた。入浴後、レンタカーを返却し北陸新幹線にて帰路につく。

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