(船津)1972年6月17日、首都ワシントンD.C. のウォーターゲートビルで働く警備員のフランク・ウィルズ(演: 本人)が建物のドアに奇妙なテープが貼られていることに気付き、 ワシントンD.C.首都警察に通報。 民主党全国委員会本部オフィスに侵入していた5人組の男は不法侵 入の罪で逮捕された。 入社してまだ日が浅いワシントン・ポスト紙の社会部記者ボブ・ ウッドワード(演:ロバート・レッドフォード)は、 社会部長のハワード・ローゼンフェルド(演:ジャック・ ウォーデン)から、 民主党本部における不法侵入事件の法廷取材を命じられる。 窃盗目的で押し入ったと思われていた容疑者たちの所持金が多額で あった事と、 所持品の中に無線機や35ミリカメラ等不可思議な物が含まれてい たためである。 予審が行われている裁判所に赴いたウッドワードは、 共和党系の弁護士が傍聴に来ていることに不自然さを覚える。 さらに容疑者のうちの1人、ジェームズ・W・マッコード・ ジュニアが、CIAの警備官だったことを告白したとき、 ウッドワードはこの事件が単なる物盗りの侵入事件ではないことを 直感し、踏み込んだ取材を開始する。 一方、先輩記者カール・バーンスタイン(演:ダスティン・ ホフマン)もこの不法侵入事件に興味を抱いていた。 彼はウッドワードの書いた原稿を焦点が甘いと指摘し、 推敲してみせる。 ウッドワードは反発しつつもバーンスタインの手腕を認めざるをえ なかった。2人の熱意を感じたローゼンフェルドは、 ベテランの政治部記者に任せるべきだと主張する編集局長のハワー ド・シモンズ(演:マーティン・バルサム)を説得し、 2人を担当記者にする。 当初は政府機関の厚い壁に阻まれ五里霧中の状態であったが、 ローゼンフェルド、サイモンズ、編集主幹のベン・ブラッドリー( 演:ジェイソン・ロバーズ)等、 社の幹部の叱咤を受けながら取材を進めていく内に、 僅かながら現れ始めた情報提供者や以前からのウッドワードのニュ ースソースである謎の人物ディープ・スロート(演:ハル・ ホルブルック)からの助言・示唆により、現大統領リチャード・ M・ニクソン再選委員会の選挙資金の流れの不自然さに行き着く。 それによって侵入事件の全貌が次第に明らかになってきた。 事実関係の調査を済ませた記者たちは事件を記事にする。 情報提供者たちの証言の裏が取れない内は断固として掲載を認めな かったブラッドリーもついに掲載を許可。記事が掲載されると、 主幹のブラッドリーとワシントン・ ポスト紙はニクソン政権から名指しで非難と冷笑を浴びる。 さらには情報提供者にも証言を翻され、 2人の記者は窮地に立たされてしまう。世間・ 一般市民の事件へ反応も薄い。 そんな中ブラッドリーは編集会議で、 あくまでも2人の記者を後押しするよう、幹部たちに厳命する。 ウッドワードはディープ・スロートからCIA、FBIなど諜報・ 捜査機関がニクソン政権に牛耳られようとしており、 2人の記者のみならずワシントン・ ポストの幹部も監視下にあると警告を受ける。深夜、 自宅に来て状況を伝える2人に対しブラッドリー主幹は、 合衆国憲法修正第一条で保証されている“報道の自由”を、 そして“この国の未来”を守る為あくまで戦う事を告げ、 そして二度とヘマをするなとハッパをかける。 1973年1月20日、再選を果たし、 就任式で宣誓するニクソン大統領のテレビ中継が流れる中、 ウッドワードとバーンスタイン両記者の打つタイプライターの音が ワシントン・ポストの編集局に響く。 2人が火を付けたこの事件の報道が端緒となって世論を動かし、 やがて大統領の側近や政府高官を含める事件関係者たちは次々と起 訴され有罪となる。 ニクソンは1974年8月9日に大統領を辞任。ジェラルド・ フォードが第38代合衆国大統領に就任した。
しかし、 日本の西山太吉記者事件のように真実を報道するために取材すると 、色々な個人的関係が入り込んでくる。これは情に通じる様な取材も同じ。真実を伝えるにはどんな努力も必要だが「取材源」 だけは絶対に秘匿せねばならぬのが記者魂である。「 大統領の陰謀」ではその描写が中々細かく描かれている。だが映画としてはやや入り組みすぎてわかりにくいところが多く、 訴えるべき事項が霞んでしまう。 同じワシントンポスト社を描いているペンタゴンペーパーズと比べると、 方やベトナム戦争真っ盛りの1971年頃の情景、ウォーターゲー ト事件は3年後の1974年の頃で3年しか違わない が、 スビルバーグは確りワシントンポスト社を復元して描いているのに対して、 家具。器材など時代考証は「大統領の陰謀」 は違う様で違和感がぬぐえない。
(関谷)愛好会の皆さんに釣られ、立て続けに「ペンタゴン・ペーパーズ」と
本日の「大統領の陰謀」を、雨読日でもあり、見てしまいました。聞屋さんの図々しさに、改めて、感心するとともに、気の弱い私では、絶対に務まらない職業だと痛感!「文春」の記者も似たようなものなのでしょうね!
ウオーターゲートビル (保屋野)ウオータ―ゲート事件を映画化した作品ですが、(ペンタゴン・ペーパーズもそうでしたが)、巨悪に立ち向かう記者の奮闘ぶりはそれなりに楽しめましたが・・・ネットのコメントにもありましたが、何せ、登場人物が多すぎて、かつ電話のやり取りが多く、ストーリーを理解するのが中々難しい作品でした。私は、こういう複雑な事件は、映画より、NHKがよく放映している(解説付)「ドキュメント番組」の方が分りやすく、面白いのではないかと思います。D・ホフマンとR・レッドフォードの競演は見ごたえありましたが。
(安田)1972 年6月17日のウォーターゲートビル内の民主党本部で起きた盗聴侵入事件発生からニクソン大統領の辞任の1974年8月9日までの2年2ヶ月間に及ぶぶ、ワシントンポスト紙の真実を掴み報道する自由を追求するジャーナリズムの信念に対して政治権力の相克を描いた映画である。
原題は「All the President’s Men」 。先日、ブログにも載った映画「ペンタゴン・ペーパーズ 」、更にウォーターゲート事件をFBI副長官の目線で描いた映画「ザ・シークレットマン」2018年制作、原題「Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House」、 これら 3 本の映画は 1971 年から 74 年に起こったアメリア政府中枢の腐敗とも呼べる権力の乱用と自己正当化の傲慢な動きに真向から挑んだジャーナリズムとFBI副長官の孤独な闘いを描いた、アメリカの良心と正義を担保した映画とも言える。
「ザ・シークレットマン 」はFBI副長官マーク・フェルト 、後にウォーターゲート事件の情報提供者として知られる「ディープ・スロート」 本人(対外的には 秘密)の政府の公的な組織人の立場と個人的な自由と正義を守る信条の狭間で悩む一個人を描いた秀作。彼が「ディープ・スロート」ではないかと‘70年代には目されたが、本人は認めたことはない。2008年に85歳で他界するが、死去の3年前の2005年8月に自ら公表した。映画の制作はマーク・フェルトが自らを「ディープ・スロート」と公表してから13年後、死後10年後に製作された。それだけ時間の経過が必要であったのだろう。スティーヴン・スティルバーグ監督映画「シンドラーのリスト」 主役を演じた北アイルランド出身リーアム・ニーソン がマーク・フェルトを好演した。この映画はFBI副長官の知ってしまった公人の葛藤と苦悩を闘ったを見事に描いた映画。「大統領の陰謀 」と併せて観ると、ウォーターゲート事件についての理解がより増すこと請負。
(編集子)ワシントンポスト紙社内のシーンが迫力があった。ああいう場で仕事をすることを夢見た時代もあったのだが。
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