新型コロナの世界的流行は経済を麻痺させ、オリンピックをはじめ、色々な集会に甚大な影響を与え,世界では大戦並みの死者を出しています。日本の経済は立ち直る事が困難かもしれません。しかし日本人にとって、これは悪い影響だけではありません。コロナが今までなかなか改革できなかった日本人の生活習慣を見事に改善してくれているのです。その例を挙げてみましょう。
- 自宅の地位向上とテレワーク
日本では一世代前の働き蜂より家庭が重んじられるようになりましたが、共稼ぎが多く、夫婦とも不在はよい家庭とは言えません。しかしコロナ禍では残業の帰りにちょっと一杯、という生活は不可能になり、また東京では62.3%の企業がテレ(リモート)ワークを実施したため通勤が減り(注1)、その分家庭にいる時間が増えました。それに伴い自宅で飲みながら家族と話し、家庭の大切さを実感するようになった人が多いことでしょう。これはアメリカ、ドイツでは実現しているテレワークを日本人がやっと手に入れ始めた事にほかなりません。共稼ぎ家庭では親と話す時間が少なかった子供へのスキンシップも改善される事でしょう。現在テレワークが可能な職種は限られていますが、今後はどんどん増加する事でしょう。今後の課題はどう会社が環境整備をするか、テレワーク下でどう連帯感をつくるか、どう仕事の適正な評価をするか、にかかっています(表1)。
- インドアよりアウトドア志向へ、都内より郊外へ
日本人の好む室内での遊びやインドアスポーツは換気の点で敬遠され、自然の中でのキャンプ,釣りやゴルフなどのアウトドア派が今増加しています。最近の都会の戸建住宅は敷地が狭いため一本の木も植えていません。共稼ぎでは植木の世話も重荷なのでしょう。しかし緑の無い環境から時に脱出したくなるのが人間の生理です。私も都心のマンションに住んでいた時は緑を求めて毎週末ドライブに行きましたが、帰路いつも車の渋滞に悩まされた覚えがあります。そのため自宅を身動きのとれない都会から郊外に買い替えようとする人も増えているようです。これはテレワーク可能な人が通勤という都会囚人の足かせから開放され、ワーケーション(働きながらバケーション)の世界に魅力を感じているからでしょう。自然が近い環境では週末に郊外へ行く必要がないので,テレワークが進めば必然的に郊外へ移住する人が増えるでしょう。都心の企業もオフィスをより賃料の安い郊外へ移すことも増えているようです。
- 衛生習慣の飛躍的向上
日本人は握手、ハグなどの習慣が無く、マスクも抵抗ありませんでしたので、それで西洋人より圧倒的に少ない感染数で済んでいました。コロナ以前は車内やデイスコでの三蜜や手を洗う事には無関心でしたが、最近はレストランも席の間隔を空けてパリのように屋外に席を出しはじめ,アルコール消毒も完備して欧州並みになりました。今後は過密で不衛生なレストランやパブがなくなるのは目に見えています。コロナ下二年に及ぶ現在の衛生習慣はきっと日本人に根をおろすことでしょう。そのためか、インフルエンザなどの他の感染症の流行が今全く陰を潜めているのです。
- AIの普及によるお役所参りの減少
お役所でのAIの普及は菅総理の政約です。世界に遅れていたお役所仕事、「印鑑は?」「あそこの部署、役所に行って下さい」も次第に少なくなり、簡単なことは自宅からオンラインで済むようになるでしょう。それに合わせて役所の台帳をAIに変えるまで3年位かかるかもしれませんが、色々な契約書もオンラインでハンコ無しとなれば、テレワークもやり易くなるでしょう。今後病院も再診、投薬など単純な業務はオンラインで出来るようになるでしょう。それにしてもマイカードをAIT改革やワクチンパスポートにもっと役立つようにしてもらいたいものです。
- 無駄な外交支出の節約と日本文化の危機
日本ではおつきあいの為の無駄な会合や冠婚葬祭が多く、その為の支出や贈答品がばかになりませんでした。家計を削ってまでそちらに回す必要もあったでしょう。コロナはそれらの無駄な会合を削減する良い機会になりました。その分を家庭や子供の教育の支出に回せば、豊かな家庭生活が送れる事でしょう。一方中止を余儀なくされた日本の世界に誇るべき文化、地方の祭りや日本画,日本舞踊などの芸術を保存することは最も重要です。日本各地の祭り、花火などは外国にない素晴らしい文化です。今、これらの文化が存亡の危機に直面しています。文化芸術は廃れた場合は回復するのに30年はかかるのです。ワクチンが行き渡りましたら、その分をこちらの方にまわして楽しむと同時に、日本の大切な文化芸術を保存しましょう。
(提言)コロナウイルスは変異を繰り返していますが、幸い今のmRNAワクチンは多少の変異にも効果があるようです。しかしいずれはワクチンも効果が薄れ、変更する必要が来るでしょう。それに応じて新しいワクチンを繰り返し接種する必要があるので、ウイルスと人間は5年間は共存(競存)することになるでしょう。その長期戦の中でウイルスを悪者と見る事に終始せず、「自己の生活を刷新するため神が送った使者」と考え、自らを前向きに変えてゆく事が、コロナ禍を乗り切る秘訣ではないでしょうか。いじめや引きこもりなどの子供の問題,親の運動不足による肥満、そして離婚の増加や子供の虐待などはそのほとんどが都会病です。日本は世界一緑豊かな国ですので、この機会に今の生活を見直し健全な家庭を築きましょう。社会も変革するであろう、その5年後はあっという間に来るものです。
注1:2020年度ニッセイ景況アンケート調査結果による
表1:テレワーク体験者の評価(GPTW ジャパン報道発表から)
リモートワークを肯定的に感じた人の理由(上位5項目)
会社が働き易い環境整備をしている 57.0% コミュニケ ーションが活発で人間関係が良好 29.7% テレワーク下でも連帯感を感じる 24.1% 会社の将来性を感じる 22.8% 必要以上の監視,管理がない 18.4%
テレワークを否定的に感じた人の理由(上位5項目)
組織の連帯感が感じられない 41.9% 会社の将来性を感じられなくなった 25.8% 公正に扱われていない 17.2% 適切に評価されていない 17.2% 仕事で自分の成長を感じられない 15.1%