フランスの混沌   (在パリ 平井愛子)

ご存知のように、9日の欧州議会選挙で、フランスでは極右のRNがこれまでになく勝利をおさめ、マクロンの与党Renaissanceは大敗し、同日夜、マクロン大統領はフランス議会の解散を発表しました。オリンピックを来月に控え、6月30日に第一回目選挙、7月7日に第2回目というスケジュ-ルを打ち出しました。ウワアと言っている暇もなく、下院の議員たちは早速個別訪問を始めています。社会党は単独では勝ち目はなくすべての左翼を一堂にしたいと動いていますが、まとまりは期待できません。マクロンにガッカリした人達の票がマリ-・ルペン率いる極右に流れたわけですが、新しいRNの若い党首Jordan Bardellaは28歳、イケメンで弁も立つこの人は極右の今まで持っていた”怪しい危険性”を塗り替え票を集め、なかなか侮れない存在のようです。フランスで極右が台頭するなんて今まで考えられない事ですが、現実になっています。イタリアでもオランダでも極右が政権を握っていますが、何か恐ろしいですね。明らかに行き詰まり状態ですね。

(船津)米国然り、欧州全体も然りで世のかな極右が承けるような世の中ですね。「自分本位」「自国さえ良ければ全て良し」オリンピック精神は何処に。ヤレヤレ。東京も7月7日七夕に都知事かどうなるか。40人以上立候補とか。まぁ世界の民主主義——。

(安田)マリー・ル・ペンの後継党首3代目ジョルダン・バルデラ(Jordan Bardella、1995年生、28歳)を戴く極右・国民連合(Rassemblement National: RN) が、万が一勝てばパリ五輪どころの騒ぎではなくなりそうです。興味あるフランス政局について、色々な機会に読んだマスコミ記事をまとめてみました。

ヨーロッパ、経済、移民、民主主義、ウクライナ問題は両者の主張の違いを際立たせている。マクロンは、「ヨーロッパの主権」を称賛し、「ヨーロッパ共通の防衛」を構築しようとする。巨額の貿易黒字を抱えるドイツと、巨額の貿易赤字を抱えるフランスとでは、経済政策が異なる。フランス(マクロン)はヨーロッパの軍隊を作ることを望んでいるが、ドイツはアメリカの軍隊に守られることを望んでいる。
アメリカのトランプが、アメリカの同盟国を考慮せず、国益に固執することを望むように、ル・ペンは自国を意のままにしようとするだろう。プーチンに対するヨーロッパ統一戦線の戦闘に立つマクロンとは逆に、ウクライナ戦争をめぐるロシアへの制裁措置には賛成しないだろう、と推測できる。ウクライナ問題に関しては、ル・ペンとトランプは考えが似通っているようだ。
移民問題は、両者を最も大きく隔てる案件だ。アメリカやイギリスのように移民を歓迎し、彼らを市民として育成する路線を標榜する「アングロ・サクソン」の熱烈な賞賛者であるマクロンは、移民を肯定的に捉えている。この5年間、移民を抑制するどころか、不法移民を減らすことさえもしていない。一方ル・ペンは、合法的な移民も不法な移民も攻撃している。彼女は、フランスに呼び寄せる移民の権利を抑制し、社会保障給付へのアクセスを厳しくし、帰化をより困難にする考えを持っている。
フランス人口統計局によれば、フランスのイスラム教徒人口は約680万人(デンマーク590万人より多い)、総人口の10%に当たるという。主として北アフリカのアラブ諸国(アルジェリア・チュニジア・モロッコ)からの移民であるが、彼らに加えて、旧植民地のアフリカ黒人諸国、カリブ海・南米諸国、東南アジア(ベトナム・ラオスなど)からの移民もいるだろう。日本もやがては直面することになる移民政策は厄介な問題だ。一旦移民を受け入れれば、彼等の出生率の高さと相俟って、顕著な人口増加(占める率も絶対数も)は避けられない。彼らの多くは貧困層に属し、国の社会保障負担は国の財政を難しくするのは確実だ。日本の政府と国民は、本音ではル・ペンの考え方を多としていると考えられるが、建前上或いは国際関係維持上、日本の少子化・労働力不足問題とも絡み、この厄介な問題に如何に対応するかは、日本の将来(50年後、100年後、さらに長期に亘り)を大きく左右する重要な課題だ。ある意味、孤立しているル・ペンの移民政策に関しては、「移民を認めない」と政府が広言している日本は、「ル・ペンのフランス」と近いと言えるだろう。
マクロンに大統領選挙で2度敗れているル・ぺンは、議会解散発表にすぐさま反応。「国民連合」(RN)は「権力を行使する用意、大規模移民に終止符を打つ用意がある」と述べた。来るフランスの総選挙はパリ五輪の数週間前の6月30日と7月7日の2回に分けて、投票を実施するという。選挙の帰趨は如何? フランス総選挙の2回目投票日の7月7日は、東京都知事選挙日と重なる。興味深い「七夕の日」に東西でなるはずだ。
(菅原)安田 さんや 世の中は、左から右、右から左、また右、左と移ろうものです。カッコー良いことを言っちゃったなー。
(編集子)欧州という一つの文化圏でまとめておけばそれなりの歴史的意味はあったはずだが、グローバリゼーションなどという妖怪にまどわされ、拡大してみたあげくにあわてている欧州はゲルマンの大移動でほろんだローマの歴史に学ぶべきではないか、と思えてならない。出羽守たちが何と言おうと、文化は変わらないし変えてはならないものだ。昨今、ジェンダーギャップとやらで騒々しいが、全く文化の異なる社会でのあり方を横から見て、それと比べてうんぬんかんぬんという愚挙はいい加減に辞めたらどうか、と思うんだが。