誤嚥性肺炎について   (普通部OB 田村耕一郎)

 

友人から、親戚の方に起きた事故に関して、注意喚起のメールをもらいました。参考になると思いますので紹介します。

1.誤嚥性肺炎って?

誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液などが誤って気道に入り込んだときに、一緒に口やのどの細菌やウイルスが入り込むことで起きる肺炎で、70歳以上の高齢者の肺炎の7割を占めています。

通常、食べ物や唾液を飲み込むときは、空気の通り道である気管にフタがされ同時に食道が広がるので、食べ物や唾液などは食道にだけ入ります。ですが、高齢者や脳卒中などで体にマヒがある人は、このフタの働きが低下して飲み込むときに気管がしっかり閉じにくくなって「誤嚥」が起きます。このときに、口の中やのどにいる細菌やウイルスが食べ物や唾液と一緒に気管から肺に入り、誤えん性肺炎を引き起こします。

一般に、肺炎を発症すると38℃以上の発熱や強いせきなどが起こりますが、誤えん性肺炎ではそうした典型的な症状が現れにくく、「ハアハアと呼吸が浅く速い」「何となく元気がない」「体が異常にだるい」「食欲がない」といった症状が多くみられます。また「せん妄」といって、話す言葉やふるまいなど意識に混乱がみられることもあります。高熱が出るまで、軽い咳込みと食欲がなくなった程度なのに誤嚥性肺炎を起こしていたというケースもあります。

2.口は万病のもと

誤えん性肺炎が高齢者に多い理由は、主に「えん下障害」「せき反射の働きの低下」「口の中が清潔に保たれていない」「体力や抵抗力の低下」の4つとされています。中でも特に重要なのが3番目の「口腔ケア」です。口腔ケアがしっかり出来ていれば、口の中の細菌が少ないので誤嚥しても誤嚥性肺炎になりにくいです。

口腔ケアは誤嚥性肺炎の防止だけではありません。口の中が不衛生で細菌が多いと、様々な疾患を引き起こすことが分かっています。入れ歯のケアをほとんどしていないと高齢からくる誤嚥に、口腔内の不衛生が重なって、誤嚥性肺炎になることがあります。

3.口腔ケアで万病予防

口腔ケアには、歯みがきやうがいなどで口内を清潔に保つだけでなく、口内の働きを良くして「嚥下機能」を向上させるためのリハビリも含まれます。口腔ケアのうち、口内を清潔にするケアを「器質的口腔ケア」、口や喉の筋肉を鍛えるケアを「機能的口腔ケア」と呼びます。

「器質的口腔ケア」は、日常的に行う歯みがきやうがいで、歯に付着した食べかすや汚れを落とし、虫歯や歯周病、口内炎を防ぐ効果があります。また、歯ぐきや舌、頬の内側などの汚れにも細菌が多く繁殖しているため、口の中にある肺炎の原因菌を減らせます。入れ歯の場合は、はめっぱなしにすると雑菌が増えやすいので、寝る前は必ず外しましょう。

「機能的口腔ケア」は、口や喉の筋肉を鍛えるケアで、食べ物や唾液がうまく飲み込めるようになるほか、円滑なコミュニケーションにもつながります。よく噛み、よく話すことで脳に刺激を送り、気持ちの安定もサポートできます。

機能的口腔ケアの代表例が「嚥下体操」です。下の要領で口周りの筋肉をほぐしたり鍛えたりします。また、「パタカラ体操」といって、「パ」「タ」「カ」「ラ」を組み合わせて発声練習して、口と舌の動きを滑らかにします。

<https://blog.ushinomiya.co.jp/blog/data/blog_img/9488_7_org.png>

口腔ケアは、単に歯や歯茎のためだけでなく、健康長寿とQOL(生活の質)の維持・向上に必要不可欠です。まだ習慣になってない方は、ぜひ今日から取り組みましょう。