「明日に向って撃て!」は、組織的権力に対抗する個人的力で銀行強盗や列車襲撃等を繰り返した実在のアウトローをモデルに、その自由奔放な生き様をユーモラスにシニカルに描き、アメリカンニューシネマの傑作と言われている。
監督はジョージ・ロイ・ヒルで、確かに華麗なノスタルジーや洒落た映像美等モダンな感覚で描かれたアウトローの逃避行は、懐古というノスタルジーと正反対の新感覚の青春西部劇と言えるかもしれない。その結果は、アカデミー賞ノミネートに、作品賞、監督賞、音響賞。受賞には脚本賞ウイリアム・ゴールドマン、撮影賞コンラッド・ホール、作曲賞バート・バカラック、主題歌賞雨にぬれても からも窺い知れる。
冒頭モノクロ映像、「これは実話に基ずく」という字幕から始まり、野外の陽光でモノクロからカラーへ。新時代の自転車での野原の滑走はバート・バカラックの「雨に唄えば」とのマッチングは新感覚そのもの。実在のアウトロー、ブッチ・キャシディに、当時脂の乗ったポール・ニューマン、サンダンス・キッドに新進気鋭のロバート・レッドフォード、各々両雄が役を楽しみ乍ら奔放に愉快に演じている。強盗等やることは自業自得で厳しいが、ブッチとサンダンスの会話がユーモラスで何故か憎めないし、演技も飽く迄陽気で明朗且つリズミカルで、何となく軽い気持ちで見ることが出来る。物語は一言で言えば、主人公の二人が逃げて逃げて逃げまくるお話。
其処に、エッタ(キャサリン・ロス)という女性が加わるが、三角関係にならず、華やかさと気品が画面に広がり、ロマンティックな風味が加わる。広大な西部の平地、岩や山を駆け巡り、進退窮まれば眼下の渓流に飛び込んだりして、結局追手の影が忍び寄り、西部劇の象徴的な舞台から南米へ追いやられ、ボリビアに辿り着く。英語が通ぜず、エッダに教わった片言のスペイン語で銀行に押し入ったが、まるきり通じない。未来に希望を失ったエッダが帰国した後、ボリビアの軍隊と警察に追われる身となったブッチとサンダンスは、オーストラリアへの夢を語り合うと重囲の中に躍り出る。一斉射撃の砲火が集中するとストップモーション。一瞬から永遠へと昇華したのか。時代に遅れて来た二人に無法者の最期は、生き様は半ば喜劇的ではあったが、喜劇的要素が悲劇の要素の度合いを増幅したのではなかろうか。
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