エーガ愛好会 (157) セーブゲキのトリビアふたつ

小泉さんの最近の投稿 マグニフィセントセブン の注記で、ローズバーグを架空の街だ、と書いた。これを書いた時には、かの 駅馬車 で御者のアンディ・ディヴァインが行先をローズバーグ!と怒鳴るのだが、これが ROSEBERG かROSEBURG のように聞こえ、こういう町はない!と思い込んでいたのが先入観としてあった。ところが先日、読売新聞に今回の米国での妊娠中絶違憲論の記事で州別にその対応を色別に著した地図があり、州名がわからない部分があったので手元にあった米国地図と見比べていた時、偶然にローズバーグという記載があるのに気がついた。この地名は LORDSBURG という綴りで、現在のニューメキシコ州の、アリゾナとの州境に近く、メキシコとの国境とも同じくらいの距離にある。フォード作品によく出てくるリオグランデ河からもあまり遠くないから、西部劇の舞台としてはうってつけの場所だろう。。

米国版グーグルによると、この街はヒダルゴ郡の州都で街の創立は1880年、現在の人口は3000人くらいであるそうだ。1880年、というタイミングだが、駅馬車 のイントロ部分で “カスター将軍の全滅が西部に伝わり現地で不安が高まっている” という時代背景が説明され、そのニュースを伝える電信のモールス符号が効果的に挿入される。ダコタ州リトルビッグホーンで第七騎兵隊が全滅したのは1876年6月25日だから、この時点でこの街にいく駅馬車路線があったかどうかは分からないが少なくとも架空の街だった、と決めつけたのは小生の早とちりだった。

米国版ウイキの記述によると、この街は第二次大戦中ここに住んでいた日系人二人が虐殺されたという史実で知られている、というが、西部劇映画に登場した、という記述はない。念のため同じUSグーグルで、あらためてROSEBERG または ROSEBURG を探してみたらオレゴン州はそういう街があるそうだ。もし 駅馬車 が オレゴントレイルでの話だったら(リメイクのアレックス・コードものは舞台をがらりと変えてワイオミングの森になっていた)、この推理(?)は成立したかもしれない。荒野の七人 シリーズはメキシコと切り離せないストーリーだから無理だろうが(ただし、コメント後半のサンタテレサにかかわる話は正しい)。

今日(7月1日)放映の リバティバランス、後半の1/ 4 くらいなんとなく見てしまった。たぶん4回目くらいになるのだろう。以前書いたがリー・マーヴィンが決闘に出かける直前、ポーカーをしていて、最後にできた手がエースと8のペア、deadman’s hand であることを確認した。US版グーグルにはさすがに詳しく解説があったが、そもそもは開拓期の西部の英雄だった ワイルド・ビル・ヒコックが1876年8月2日、ダコタ州デッドウッドで裏切り者に背後から撃たれて死んだとき、持っていたカードがそう呼ばれるようになったのだそうだ。その組み合わせは ダイヤとクラブのエース、クラブとスペードの8,それとビルの血に染まったスペードのクインだったという。この話は 駅馬車 でも同じく使われたことは以前にも書いたことだが、フォードは小道具としてこういう伝説に忠実だったようだ。

駅馬車とこの映画はほかでも縁があるようで、名ばかりの善人保安官をやるのはおひとよしの御者だったアンディ・ディヴァイン、最後近くに議員選挙で敵側の演説をするいかさま紳士が過去を背負った南部の貴族を演じたジョン・キャラダインだった。ついでに言えばマカロニウエスタンのヒーローになったリー・ヴァン・クリーフも出ていた。”フォード一家” の出演だが、フォードが気に入ったリー・マーヴィンとウエインは全く気が合わなかったそうだ。どうでもいいことだが、それをいったらおしめえよ、というのがトリビアの世界だわな。