エーガ愛好会 (124) ”戦争と平和” を巡って

(保屋野)ロシアのウクライナ侵攻が始まったタイミングで、この大作を観ました。この長編最大の見所は、ナポレオンとの戦争シーンですが、、これは兵士や馬の数含め迫力満点でした。制作費用はいくらかかったのでしょうか。もう一つは、ヘプバーン演ずるナターシャとヘンリーフォンダ演ずるピエール及びメルファーラー演ずるアンドレイ等との恋愛劇ですね。もちろん、それぞれ名優は魅力的でしたが、ピエールの妻、エレン役のアニタ・エクバーグの色香が際立っていました。ただ、ストーリーは、トルストイの原作を読んではいないので分かりませんが、映画では、正直やや平凡で、イマイチでした。

なお、ネットにもありましたが、私も「ドクトル…ジバゴ」とつい比べてしまいましたが、ストーリーはジバゴの方がはるかに面白く、感動的で何といっても、あのモーリス・ジャールの主題歌「ララのテーマ」の存在感が圧倒的でした。戦争と平和の音楽もあの、ニノ・ロータなのですが、あまり印象に残っていなかったので、ユーチューブで聴き直したのですが、ラ・マルセイエーズを取り入れた主題歌と「ナターシャのワルツ」等さすが、ニナ・ロータだと思いましたが、ララのテーマには及ばないでしょうか。

(安田)ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤン二主演の映画「ひまわり」に出演したロシア女優ルドミュラ・サベリーエワが印象に残り、後年、ヘップバーンが演じたナターシャ役で彼女が主演したソ連版「戦争と平和」を随分昔に観た。2部に分かれ併せて6時間半もあり、ヘップバーン版3時間半どころでない超長編大河映画だった。高校時代に読んだ小説同様、登場人物・時代背景・筋書きなど多岐で複雑過ぎてよく理解したという記憶はない。

色香際立ったと保屋野さん仰るアニタ・エクバーグ(スエーデン人)はフェリーニの映画「甘い生活」で衣服を着たままマストロヤンニとローマのトレビの泉に飛び込むシーンが印象的でした。確かに波瀾万丈の筋書きの面白さといいダイナミックな話の展開といい、素晴らしい音楽「ララのテーマ」のドクトルジバゴに軍配を挙げます。トルストイのみならずドフトエフスキー、ショーロホフなどロシアの巨匠作品は読むのに難儀します。途中で降参が結構あります。

(飯田)映画「戦争と平和」はオードリー・ヘップバーンと当時結婚して話題となったメル・ファーラー、ヘンリー・フォンダと保屋野さんが目を付けたアニタ・エクバーク等の豪華キャストをぼんやり見て満足すれば良い映画で、演出的には主人公の一人か二人が、どうなったか画面から消滅してしまう編集だったと記憶しています。但し、この映画の後半の雪上逃亡シーンは長時間をかけて見応えのある撮影と編集だったと思います。

当時のある映画評論家は、出演俳優で小説「戦争と平和」を読んで自らの役作りをした思われる俳優はヘンリー・フォンダだけだと、この映画で評論していた記憶がありますが、顔つきが真面目そうに見えるのがヘンリー・フォンダだけで、他の俳優は本を読むタイプではないと顔で判断して言ったにすぎぬと私は思いました。「戦争と平和」のソ連版は安田さんが挙げたように、まさに映画としては演出、俳優の演技共に、アメリカ版を遥かに凌ぐ凄い大作です。但し、1965年制作のソ連版は当時の映画評論家が一目を置いていた名匠の監督:セルゲイ・ボンタルチェックで第1部150分、第2部100分、第3部82分、第4部88分とアメリカ版の3時間半が短すぎることを示したような作品でこのような長編が映画と言えるかという議論の対象にもなりそうです。

菅原さんが途中読むのをGIVE-UPされたという「カラマーゾフの兄弟」もソ連版(1968年)で監督イワン・プイリエフ第1部85分、第2部75分、第3部80分でBSプレミアムで放映されました。但し、映画としての出来はソ連版「戦争と平和」より低く、平凡でただ長かったという印象です。

(かく言う私は小説「戦争と平和」「カラマーゾフの兄弟」を読んだのか?と聞かれると当然、読み始めて途中でGIVE-UPした仲間です。)

(小田)ウクライナ問題と同じ時期での放映は偶然なのでしょうか?(新聞の漫画に、プーチンがウクライナの地図の上でブラシで国境を消しながら、カーリングをしている様子が、描かれていました。先日のメールのロス家=ロスチャイルド家ではないことを知りました。)

ヘプバーン版のDVDは以前購入して持っております。ヘプバーンが、初々しく、実際に夫婦になったメル·ファーラーと共演していて興味深く観ました。

ヘンリー・フォンダの役もですが、全体的にやはりロシア版より弱く感じます。ナポレオン率いるフランス軍の撤退場面は印象に残っています。
昔は全集は「戦争と平和」から先ず売り出していたり、名作のNo.1のようになっていましたが、大変な読書家の皆様でもあまり読んでいらっしゃらないのですね。勿論私もですが。

(編集子)高校2年の時あたりまで、いわゆる名作と呼ばれる本にあこがれていましたが、ロシア文学に行きつくまでに息がきれてしまい、トルストイもドストエフスキーもいくつか短編を読んだだけで今まで来てしまいました。戦争と平和はぜひ読みたいと思ったままで映画のほうも名作と聞いていましたが(本を読んでないんならせめてエーガ、となるべきでしょうが、逆に原作も読まずにエーガはねえだろう意識が働いて)見ていません。まだまだ本を読む気力は残っているので、(ドストエフスキーを読んでないなんて!と叱られたやっこの顔が浮かびます)挑戦すべきなんでしょうが。

(金藤)Giさんがドストエフスキーを未読だとお聞きしたのは、エーガ愛好会が始まってからです。Giさんのお友達Sさんが教えてくださったので、私は「えーっ!? 大読書家のGiさんがドストエフスキーを読んでいなかったなんて️」と驚いたのです。iさんの秘密だったのですよね Giさんを叱るなんてーーそんな とんでもない事 いたしておりません。私もカラマーゾフの兄弟 途中でギブアップしました と、その時のメールに書きました。