”ナイブズ・アウト” を観てきた

しばらくエーガにいってないよなあ、なんかない? と二人で夕刊を見て、ダニエル・クレイグが出る、というのがきっかけで府中シネコンへ出かけた。本格的推理劇、しかも密室ものとなるとどんな展開になるのか? クリスティものやらコロンボ警部シリーズまで、テレビでは毎日といっていいくらいミステリをみているが、やはり映画館で見る映画、となると期待が違う。

今までもいくつも推理小説の映画化は見てきたがハンフリー・ボガートとローレン・バコールの ”大いなる眠り(映画の日本語タイトルはどういうわけか”三つ数えろ”なんてものになっている)”、クリスティの ”オリエント急行” ”ナイル殺人事件” ”地中海殺人事件” の3本、エルキュール・ポワロをそれぞれ違った俳優が演じたものが原作の雰囲気を残していて面白かった。。チャンドラーものでは ”さらば愛しき女よ” のロバート・ミッチャムがほかの作品とは全く違った、哀愁を感じさせる演技で感心したものだったが、この ナイブズ・アウトがどんなものか、なによりも007しか印象にないクレイグがどんなものか、楽しみだった。原作のことは全く知らなかったが、ほかの作品にくらべて探偵役の出番はあまり印象に残らず、クレイグは正直、期待外れだった。このつぎの007が春には公開というので、やはりそちらへ出向くことになりそうだ。

前もって知識もなくて見たので、タイトルが何を意味するのかも知らなかったが、現場で原文をみてああそうか、と膝を打った。ナイブズ、とは KNIVES つまり KNIFE の複数形だったのだ。たしかに映画の中では道具の主人公はナイフであり、画面もナイフではじまりナイフで終わる。かなりクラシックであるけれども、現代ものらしく携帯電話が活躍したりカーチェイスもあったりするので、その分救いがあって、陰惨な雰囲気にはなっていなかった。

ストーリーの展開で言えば外部から2階へはしごをかけて侵入するシーンがあって、そのとき、はしごの一部がこわれてしまう。その破片を飼い犬が拾ってきたのをクレイグが見つける。見ている方はここで ! と思うはずだが (これから見る人のためなぜかは伏せる)クレイグはその心配をよそに全く違った結論を出す。見ている方は、実はそのヒントを見ているのだが、僕の場合はすっかりわすれてしまっていた。この辺が映画というツールが提供できる面白みなのだと思わされた。

もう一つ、最後にクレディットタイトルを見るまで気がつかなかったのだが、重要人物のひとりがかの ”サウンド・オブ・ミュージック” のクリストファー・プラマーだったのも嬉しい発見だった。やはり人間、美男俳優と言えども時間は公平にながれるものだ。

見終わったら行こう、と決めていた府中のうなぎ屋が休業。結局、我が家近くのなじみの店で鍋ものをつついた。年始につづいてのハプニングで終わった映画行だった。