(小泉)いつもは作品内で通行人よろしく登場するヒッチコックが珍しく冒頭から「実際に> 起こった出来事をもとにした映画」と紹介する。ヘンリー・フォンダ扮するベースの バンドマンが、妻ヴェラ・マイルズの歯の治療費を借りようと保険会社を訪れたこと から、目撃証言と筆跡の類似から容疑者として逮捕、拘留されるという恐怖を描く。 ヒッチコック作品としては、最初から犯人ではないことが判っている事実であり、恐 怖心もスリラー的要素もないことは、冒頭にヒッチコックが登場したことから、認識 されたのだった。フォンダも間違えられた男の恐怖心を淡々と演じるほかなく、妻の ヴェラ・マイルズは美しい妻が、自分の強すぎる責任感から精神に異常を来たす痛々 しさから入院するまでを演じ、アンソニー・クエイルが誠実な弁護士役で、協力を惜 しまない姿に救われる。間違えられた結果は当時免罪については如何だったのだろ う。今なら相当多額な損害賠償を受け取ることになったものと想像されるが、映画で は損害賠償には触れず、めでたしめでたしで終演。
(飯田)ヒッチコック作品は個別の作品ごとに評価するのでなく、全作品をセット及びシリーズとして楽しむのが良いと思っています。その点で「間違えられた男」はヘンリー・フォンダが西部劇の「アパッチ砦」や「戦争と平和」で演じた一徹な正直者の演技と同系列の演技をしていると思って演技を観ると楽しめるし、ヴェラ・マイルズという美女が急にスクリーン・デビューしてきた映画としてストーリーを度外視して時々観るのは楽しめます。
そして、安田さんの「ヒッチコック映画論と作品の解説付きのべスト10」に大いに興味をそそられました。概ね私も同様の評価ですが、自分の好みから強いて外す作品が「サイコ」と「鳥」です。両作品とも2度3度と見直したいと思わない作品です。「サイコ」のアンソニー・パーキンスはこの作品では上手い演技と思ったら、他の作品もみな同じくおどおどした演技をするのであまり好きになれずに終わりました。パット・ブーン全盛時代に、アンソニー・パーキンスがデビュー当時の「月影の渚(Moonlight Swim)」の入ったEPレコードを買って一緒に歌った時期もありました。
「断崖」「白い恐怖」「汚点」「疑惑の影」などはそれぞれに長所短所があり楽しめます。安田さん、保屋野さんも挙げているベスト10外での「ハリーの災難」は私も大好きでしたが、劇場公開当時のアメリカ東部(バーモント州、ニューハンプシャー州)のロケの紅葉の色がその後のテレビ放映では全く色彩が劣化していて楽しめないのが映像技術の限界で残念です。それと「私は告白する」はモンゴメリー・クリフトとカール・マルデン(神父役)が最近見ても新鮮な感じがしました。後は「泥棒成金」です。南仏リビエラ海岸を舞台にした粋なケーリー・グラントとグレース・ケリーのほんわかした騙し合いは風景の綺麗さと共に私は大好きな一本です。
(安田)ヒッチコック映画は“スリラーやミステリー”ではなく、彼は自らの映画を“サスペンス”と云っています。サスペンスは英語suspend(サスペンド=宙づり)に由来しているとのこと。精神的に宙ぶらりんになっていて、不安感やハラハラ感を持っている状態のこと。ミステリーと違い、謎解きはない。サスペンスは感情(エモーション)を揺り動かすことが絶対的要素、だとヒッチコックは云っている。「間違えられた男」の場合、ヘンリー・フォンダのハラハラ感に観客を同化させ、感情移入させることがサスペンスの核だと、云わんばかりです。冤罪事件で決着しますが、終盤までどのように決着するかフォンダもハラハラしているし、同化した観客をもドキドキさせるという訳です。一番端的に見事に描かれた映画が「めまい」でした。高所恐怖症のジェームス・ステュアートが教会の階段を上がる時めまいを起こすシーン。彼のみならず観客もハラハラ・ドキドキさせられます。これこそヒッチコックの真骨頂です。「間違えられた男」ではそこまでのハラハラドキドキ感は味わえませんでした。彼にしては凡作だと思います。
(保屋野)ヒチコック、私も別にファンではないのですが、観て損した、という駄作はありませんね。私が印象深かったのは、ケ・セラ・セラの「知りすぎた男」キュートすぎる、S・マクレーンの「ハリーの災難」映像にも感心した、恐怖の「鳥」そして、私のツートップは、J・スチュアートの「裏窓」と「めまい」でしょうか。G・ケリーとK・ノヴァクが魅力的でした。
(保屋野)名作「北北西に進路をとれ」は昔観た記憶はあるのですが、あまり覚えていないので、29日に観ます。また、チビ太一押し?の「レベッカ」は以前コメントしましたが、多分あの「名著」を読む方が面白いのでは。
(船津)飯田さんはやはり「師匠」ですよ!リズのこんな切り抜き誰が持って居ますか
小生普通部時代1952年-昭和27年-に有楽座?で観た「陽の
また、カサブランカ50年記念-1952年-のLDが何故か在り
又、若き血の溢れていた頃飯田さんのように「エーガキチ」だった
しかし、飯田さんの新聞の切り抜きは凄いですね!又、安田さんの