エーガ愛好会 (196)エンディングシーンを語ろう  

エーガの楽しみは尽きないが、そのエンディングシーンは作品の印象とともに心に残るものだ。愛好会メンバーのやり取りの中で、ワイオミング州に位置するグランドティトン国立公園のことが取り上げられた結果、話がこのエンディングに飛んだ。

(中司)グランドティトンとは僕にとっては シェーン のラストシーンでアラン・ラッドが去っていくカットが撮影された場所、であります。社長のドライバー役でララミーから1日ドライブして、泊まったホテルの名前は忘れましたけど、おあつらえ向きにただただゴージャスな夕陽を見た場所、でもあります。あの夕陽の荘厳さに比べればイエローストーンなんてのはなんということも感じませんでした。その後、ユーゴ―・ウインタハルタの カナダの夕陽 がイージーリスニングでは 白い恋人たち とともに小生の大の愛聴歌になったのはたぶんこの夕陽のせいです。

(小田)グランドティトンでお泊まりになったホテルは、《ジャクソンレイク ロッジ》ではないかと思います。一面ガラス張りのレストランに掛かったカーテンを西日が当たる頃は閉めておき、夕陽が山にかかるとサット開け、皆拍手喝采!

(安田)僕の映画エンディング・シーンBest 4です。

(中司)シェーンの有名な ……..Shane, come back !   という ブランドン・ウイルドの声が響くこのカットの後、ラッドが雪の中を去っていくのが最後の最後ですけど、この時、ラッドは右手だけで手綱を持ち、左手はぶらりとさげていました。ジャック・パランスとの決闘(映画史上最速の早撃ちだったと言われてますね)で確か負傷していたはずなので、そのリアリティに感心したものです。

第三の男 のあまりにも有名なラストシーンですが、このカットのあとジョセフ・コットンを載せて帰ろうとジープで待っていたトレヴァァ・ハワードがコットンの気持ちを察してか、苦笑してそのまま去っていってしまう。このカットが僕にはジーンときましたね。男にしかわからない感傷でしょうが。
カサブランカ のラストは貴兄に同感。
荒野の決闘 はこのカットもいいですが、フォンダが馬上から(馬から降りなかったのがまた、いい)キャシイ・ダウンズの頬に触れて去っていく場面もよかった。降りて、ハグなんかしたらこの作品の後味はすっかり変わったでしょうか。
(菅原)去り行く美学なんて言葉あるのかな。「カサブランカ」は、その点で余り印象に残っていない。

(小田)美学か分かりませんが、ラストシーンが印象的な映画…で思い出すのは、皆様が挙げた他では;さらば友よ」(’68年)です。内容はあまり覚えていませんが、音楽が良かった事と、アラン・ドロンがチャールズ·ブロンソンにタバコの火を付けてあげるラスト シーンが有名になりました。

(安田)受け取り手によって“美学”になり得たり、或いは心寒しにも。映画にはそれらしきシーンは沢山ありそうです。例として挙げた映画に於ける去り方に加えて、「黄昏のローレンス・オリヴィエ役、「哀愁」のヴィヴィアン・リー役の去り方をどう捉えるか?
「カサブランカ」のハンフリー・ボカートの去り(別れ)方は物議を醸して当然。僕などの俗人は、君の瞳に乾杯!を貫徹して駆け落ちしたくなるかも。それも美学!
(中司)モロッコ の砂漠に残される靴のシーンとか、望郷 のジャン・ギャバンが去っていくミレーユ・バランを柵越しに見送るラスト、なんてのはいまや伝説なんだろうか。
思い出したけど、ジャン・ギャバン、てよかったよなあ。