コロナ対策ーまとめ   (34 船曳孝彦)

 

前回、医者であり科学者として、菅退陣に際しての「コロナ対策に専念するために総裁選には出馬しない」という声明に敢えて正面から、ではどう総決算するのかと問いただしました。政治については、ここでこれ以上述べませんが、総決算に当たってコロナ対策に限ってその失政は追及しておきたいと思います。

当初の観光船感染でも、水際作戦として不十分でしたが、ウィルスが上陸した後も、感染症予防法にこだわり、PCR検査をあたかも国の特権のごとく、発熱者に絞り、限定した検査しかしなかったことが第一の失敗です。この時から広範に徹底的に検査をしていれば、感染者数はずっと少なく抑えられたはずです。

予防策として、マスク着用、3密対策が柱となったのは良かったと思いますが、感染者激増の第2、3,4,5波に対して、緊急事態宣言、さらに蔓延防止対策が施行されました。しかしその期間中に政府首脳や官吏たちの飲み会、会食がバレて、政府に本気度が感じられず、次第にオオカミ少年のごとく只々発令中というムードとなってしまいました。さらに信じられない政策がGo-Toキャンペーンです。一方で感染抑止政策を採りながら、蔓延促進政策を採るという矛盾した策で、感染者増加に拍車を掛けました。人流と感染者数は完全に比例します。連休、お盆、正月などと関連し、大きなダメージとなりました。オリンピック・パラリンピック開催にも医療側からの強い反対があったにもかかわらず、開催ありきで突っ走りました。

感染者対策で、政府、メディアはすぐに病床確保を叫びます。格好いいですから。しかしこれまで何度も指摘してきましたが、コロナ専用病棟が右から左に出来るものではありません。さらにコロナ発生前の厚労省の基本政策は病床削減で、別の病院を無理やりくっつけて減床させるほどのことまでやっていました。減床、取り壊しが遅れていて、今回たまたま間に合ったという病院もありました。一方で、非コロナの一般病棟を圧迫して非コロナ患者の死亡率を上げてしまうことは許されません。

医療側も国と協議し、前回《27》で述べたような住み分けをキチンと表明すべきだったと思います。最大のポイントは自宅待機患者です。原則としてあってはならない対応です。家庭内感染のもとですし、単身者では発見時死亡していたという不幸が潜んでいます。これはまさに医療崩壊です。

生命線として頼ったのがワクチンです。ワクチン担当大臣が生まれましたが、彼はワクチン接種に貢献したでしょうか。接種開始に当たっては予め接種計画を立て、人材面、資材面、施設面、予約面、接種記録面、など全てに早急に対策を立てねばならないと、今年初めに私は指摘しましたが、何一つなされず、自治体に丸投げされ、高齢者にネットで申し込めなどという無理強いの自治体が大部分でした。日本の選挙人名簿は世界一だそうです。それに従い高齢者には通知すれば済むことです。またワクチンの実際の供給にも支障をきたしました。これでは担当大臣として失格です。 さて、ここへきて感染者数は減少してきました。政府の発言も急速に緊張感が解けているように感じます。確かに実効再生産数が1を割っていますので、この勢いで行けば収束へ向かうはずです。しかし、デルタ株ばかりでなく、ミュー株(ワクチンの効果が1/7と怖い)、ベータ株、イータ株などに対するチェックはどうやら手付かずのようです。第6波となりかねません。

新型コロナウィルスは、当初考えられたよりエアロゾル感染(空気感染に近い)が主体のようで、デルタ株では特にウィルス量が多いようです。不織紙マスクを隙間なく着けての外出が必須となります。換気が最も重要になってきました。ミュー株が流行ってこない限り、ワクチン2回接種者の感染の可能性はありますが、重症化は少なく、それほど問題にならないでしょう。