エーガ愛好会 (73) ワイルドバンチ  (34 小泉幾多郎)

西部劇に新境地を切り開いたと言われるサム・ペキンパー監督が「昼下がりの決闘1962」で、典型的な西部の正義の老いたヒーローを描いたが、ここでは西部の悪党たちの老いた一党たち、金に執着し悪事を繰り返す無法者たちが友情のために命を懸けて散って行く男の美学を描いている。

冒頭アリの群にサソリを落とし火をつける子供たちの無邪気な姿、何か恐ろしいことが起こる予感がするが、それに続いて、登場するワイルドバンチの一行をストップモーションを駆使してキャストを紹介する演出から始まる。リーダーはあの端正だった美男子の成れの果てのようなウイリアム・ホールデンのほか、アーネスト・ボーグナイン、ウオーレン・オーツ、ベン・ジョンスンという一癖も二癖もあり、善玉、悪玉を体験したそうそうたる初老のメンバーに、唯一の若者ジェレミー・サンチェスこの人だけはじめて、というそうそうたる顔触れ。

この5人が、メキシコ国境のサン・ラファエルに乗り込み、町を荒らすが、町の有力者に雇われたホールデンの昔の仲間ロバート・ライアンや賞金稼ぎたちに一斉射撃を受ける。辛うじて切り抜けた5人だが、実は5人にもう一人いた仲間は殺されてしまう。彼らはメキシコに向かうが、ライアンたちが追跡する。メキシコは、エミリオ・フェルナンデス扮するマバッチの率いる政府軍とパンチョ・ビラ率いる革命軍との戦闘状態で、5人の仲間で、唯一のメキシコ人のサンチェスの故郷の村は、マバッチに襲われ、その恋人はマパッチの女と化してしまっていた。5人はマパッチと取引し銃器弾薬を満載した列車を奪うことになる。追跡された5人が橋を渡るに際し、スローモーションによる爆破シーンが見事に人馬が落ちるさまをを描く。成功した5人は、マパッチとの取引に成功したものの、サンチェスが革命軍に銃器1箱横流ししたことがバレ、リンチを受け、のどを裂かれ死ぬことになる。

このことが、他の4人に再びヒーローの心を取り戻したのだろうか?意味不明だが、ボーグナインを除き3人が女を買った翌朝、ホールデン「Let’s go」、オーツ「Why not」。軽く言葉を交わし、自分たちが与えたものだが、重機関銃を含む 無数の近代兵器で武装した200人の敵と対決、壮絶極まりなき死闘が展開されたのだった。4人はそれぞれハチの巣になりながらも、マパッチ軍団のほとんどを壊滅させる。ライアンを除く登場人物の殆んどが死に絶える銃撃戦は、そのスローモーションのシーンにより時間を止め、夢幻の世界の出来事にしたように思えた。

(ワイルドバンチについて―ウイキペディアより転載)

ブッチ・キャシディのワイルドバンチ(Butch Cassidy’s Wild Bunch)はアメリカ合衆国ワイオミング州ホールインザウォールHole-in-the-Wall)で雑然と結成された強盗団。1969年の映画『ワイルドバンチ』と『明日に向って撃て!』で有名になった。名前は“ビル”ウィリアム・ドゥーリンが率いた強盗団ワイル

1901年に撮影されたメンバーの写真

ドバンチ(後述)から取られた。ブッチ・キャシディのワイルドバンチは、人殺しはしないよういつも努力していると主張し、キャシディは一度も人を殺したことがないことを自慢していた。しかし、この主張は虚偽であり、キッド・カーリー、ジョージ・カーリー、ウィリアム・カーヴァーなどのメンバーは、警官隊の追跡を受けている間、多くの人を殺した。キッド・カーリー1人で9人の法執行官(保安官を含む)を殺し、2人の市民が銃撃戦の巻き添えになって死んだ。以後、キッド・カーリーはメンバーの中で最も恐れられるメンバーとなった。エルジー・レイも強盗の直後、2人の法執行官を殺したが、自らも負傷して逮捕され、服役した。ジョージ・カーリーは少なくとも2人の法執政官を殺し、その後ユタ州グランド・カントリーの法執行官に殺された。

『ワイルドバンチ』 は、1969年製作のアメリカ合衆国の映画。サム・ペキンパー監督による西部劇。時代の波に取り残された無法者たちの滅びの美学を描いた作品であり、西部劇に引導を渡した「最後の西部劇」と呼ばれている。ペキンパーの最高傑作として高く評価されている。定義にもよるが「アメリカン・ニューシネマ」の一つとされる。

(編集子)最後の西部劇、という表現をよく耳にする。フォード作品を中心に、ランドルフ・スコット、ジェイムズ・スチュアート、ジョエル・マクリー、グレゴリ・ペックにウオルター・ブレナンそしてベン・ジョンスン。こういう名前がエーガの常識だったころ、そう、西部劇映画の領域にも心理描写だ人種問題だというような異形の成分が幅を利かせるようになって以来、俺っちのセーブゲキは確かに減った。しかし最後の、とはまだいうまいよ。つい先日本稿に小泉さんが書かれていたシルバラードとか、ワイルド・レンジだとか、まだまだあるじゃありませんか、諸君!