ちょこっとロシアを考えてみた   (普通部OB 菅原勲)

四回目の休戦協議で、ウクライナが自身の中立を持ち出したようだ。この他に、ロシア、と言うよりプーチンが受け入れ難い内容も含まれているらしい。しかし、ここではウクライナの中立のみに触れることとする。ただし、中立が万全なものでないことは、ヒットラーが、中立を標榜していたベルギー、オランダ、ルクセンブルクに侵攻したことでも証明されている。

ウクライナの中立とは、自分は、他の国にちょっかいを出さないが、他の国も自分にはちょっかいを出すな、と言うことだろう。しかし、これは話しが全く逆ではないか。つまり、中立を謳うならば、それは、ウクライナではなく、ロシアではないだろうか(ここで、敢えて、ロシアの中立など露ほども考えていないプーチンの名前は出さない)。中立となれば、ロシアは一石で二鳥を得ることが可能だ。一つ目、ロシアにとって最大の難敵であるNATOの侵攻を考慮する必要がなくなる。つまり、最も頭の痛い心配事が消えるわけだ。その結果、豊富な天然資源、石油、ガスなどからの収益を無駄な軍事に回す必要もなくなることになる。二つ目、そのことにより、韓国にも劣ると言われる、誠に貧弱な一人当たりの国民総生産が鰻登りに上昇し、国民を喰わせると言う、国家の本来の目的を取り戻すことが出来る。そして、その副作用だが、NATOも、無駄な軍事費を、人類の役に立つ、例えば、貧困、気候などの問題解決に役立てることが出来るわけで、一石三鳥か。

本来、ロシアが目指すべきは、ソ連崩壊により失われた国土の回復ではなく、ロマノフ王朝が生み出した、トルストイ(作家)、チェーホフ(劇作家),チャイコフスキー(作曲家)、レーピン(画家)などで代表されるロシア文化を蘇生させることにあるのではないか。それが、ロシアの最大の魅力だった筈だ。その意味では、レーニンはロシア衰退の最大の責任者と言えるだろう。ソ連となって、社会主義リアリズム(英語で言えば、Bull shit)を標榜し、ロシア文化は消滅した。所詮、ソ連は幻影だった。その版図を取り戻すことに精魂を傾けているプーチンとは、幻に生きる人としか言いようがない。そして、今のロシア国民は、騙し騙され、殺し殺されの権謀術数にのみ長けたKGB下りのプーチンを選んだことで、その責任は極めて大きい。

極論を言えば、地球上の全ての国が、中立となれば、世の中、今よりは、いささか穏やかになるのではないか、と愚考するがいかがなものか。

(児井)貴信拝承。蓋し「至言」と考えます。確かにご指摘の世界が出来れば、世の中平和になりましょうね。ただ現状(プーチン健在の間)では? それとロシヤが中立になったとして、中国はどうなるのでしょうかね?一体何時になったらこの紛争が収まることやら、小さい頭でも、悩みは尽きません。

(船津)何時も「卓見」をこれまた失礼的に軽妙に難しいことをご説明して頂き「ボンクラ凡人」もしょなりとも「知恵」が付き御礼申し上げます。所で「中立」つて何かなぁ!また分かんなくなく成ってきた。やれやる!ボンクラ凡人はダメだなぁ!国連は?スイスは?

(安田)

ロマノフ王朝時代に花開いた芸術・文芸・文学の優れた文化は共産化して以降のソ連、そして連邦崩壊後のロシアには見られない。エルミタージュ美術館が泣いているのではないか。プーチンはピョートル大帝、エカテリーナ女帝に匹敵するロシア歴史に名を遺す権力者となる野心があるのでしょう。野心の矛先は旧ソ連を構成していた連邦各国を出来るだけ取り込み昔の(彼の望む)栄光ある帝国を復活させる野望を実現させたいのであろうか?リーダーは往々にして寿命の長さがその権力保持の鍵となる。馴染みある例を挙げれば、秀吉62歳、家康76歳で共に床の上で没したが、7歳年長の秀吉が75歳まで(1610年まで)長寿であったならば徳川江戸時代とはならなかったかもしれない。

翻ってプーチンのことであるが、現在69歳、ほぼロシア男性平均寿命年齢だという。彼はパーキンソー病の疑いを持たれ、更に極度のストレス・プレッシャー・孤独感による精神的異常症候群の兆候があるのではとも指摘されている。また、政権内部の反対勢力の台頭も怖いであろう。やがて必ず訪れるポストプーチン時代はどのような形で、いつ来るのか?民主主義陣営にとってのベストシナリオは出来るだけ早いプーチンの失脚で、受け皿のまともな新政権誕生であろう。失脚を可能ならしめるのは、ブルータスが現れて暗殺、クーデター、ウクライナ問題・経済制裁が引き金で失脚などが候補であろうか。ペレストロイカのゴルバチョフは現在91歳で存命だが、プーチンも長命の可能性は勿論ある。核を持ったヤクザの組長、或いはマフィアの大ボス・ゴッドファーザーのようなギャングの親分政治家を、民主主義的な土壌で育った西側の首長は上手に御するのが苦手であるようにも見える。歯には歯、目には目を行使できない西側の曖昧戦略はプーチンを益々増上慢にさせ、常軌を逸した決断をさせるリスクがある。形勢が不利になり勝機が見出せず追い込まれた状況が、プーチンに核のボタンを押させる決断に至らせるのが最悪のシナリオだが、異常なプーチンだが第3次世界大戦だけは回避する正常心は持っていて欲しい。レッドラインと呼ばれる化学・生物兵器や戦術核を、もしプーチンが使用した場合、西側はどう対応するのか?ゾッとするシナリオだ。

僕の希望的予想は、南北朝鮮のようにウクライナは東西に二分割統治され、西側(現政権側)のNATO・EU参加は見送り、フィンランド的な中立の立場で将来の安全保障の国際合意を文章化する。兎に角、平和裡に和平が実現することを願うばかりだ。壊滅したウクライナの戦後復興は容易ではない。ロシアが賠償責任を負うはずはなく、財政が苦しい西側も充分な援助を早期に実施するのは困難で、戦後処理は優に10年を超えると予想される。

最後に難民についてだが、日本政府が協力を申し出たが、これとて長期的な観点から遠慮深謀をした結論かどうかは疑わしい。難民は2〜3ヶ月の短期滞在ではなく、長期に亘り滞在する可能性が高い。政府はそのことを想定した発言であろうか?日本社会への融合、自力更生の手立て、仕事、住居、福利厚生、保険、言葉の問題、滞在ビザなどの複雑な諸問題を考えると、軽々に安請け合いする案件ではないような気がする。

(小川)プーチンのキツネ顔、見れば見るほど胸糞悪い。騙す、狡猾、スターリンが羨ましいだけの心情。我が国の終戦前夜、あの狡猾なソ連の寝返り、僅か数日で北方領土を無傷で奪取、殆ど故人になられたシベリアでご苦労された先輩たちは何と思っておられるだろうか??!!