”ペンタゴン・ペーパーズ” を見て     (普通部OB 舩津於菟彦)

普通部時代から新聞作りをして大学では新聞研究所を一応卒業して、マスコミの端くれになり損なった者としては「報道の自由」を嫌と言うほど学んできた。
この映画も日本上映の日に真っ先に見に行き感激した。新聞記者は真実を報道するためにはいかなる手段を講じても民主主義・人権・人の生きる権利のために報道すべきだと。記者の後ろには万人の読者がいるのであり、正確に、真実を報道すべきである。
「報道の自由」で日本で一番問題になって残念な判決になったのは毎日新聞の辣腕記者「西山問題」であろう。
西山事件(にしやまじけん)は、1971年の沖縄返還協定にからみ、取材上知り得た機密情報を国会議員に漏洩した毎日新聞社政治部の西山太吉記者らが国家公務員法違反で有罪となった事件。別名、沖縄密約事件、外務省機密漏洩事件。
第3次佐藤内閣当時、リチャード・ニクソンアメリカ合衆国大統領との沖縄返還協定に際し、公式発表では地権者に対する土地原状回復費400万米ドルをアメリカ合衆国連邦政府が支払うことになっていたが、実際には日本国政府が肩代わりしてアメリカ合衆国に支払うという密約をしているとの情報を掴み、毎日新聞社政治部記者の西山太吉が、日本社会党議員に情報を漏洩した。
最高裁は「原判示対米請求権問題の財源については、日米双方の交渉担当者において、円滑な交渉妥結をはかるため、それぞれの対内関係の考慮上秘匿することを必要としたもののようであるが、憲法秩序に抵触するとまでいえるような違法秘密といわれるべきものではなく、実質的に秘密として保護するに値するもの」「当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で女性の公務員と肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたなど取材対象者の人格を著しく蹂躪した本件取材行為は、正当な取材活動の範囲を逸脱するものである」「報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでない」と判示し、秘密の正当性及び西山の取材活動について違法性と報道の自由が無制限ではないことを認めた。
「情に通じて」と残念な判決で。日本の報道の自由の権利を一部失ってしまった。この時取材源などを漏らし、かつ社会党代議士に出所が分かるそのままの書類を渡すという記者としてあるまじき行動もあったが、残念な判決だった。