image_pdf

エーガ愛好会 (77)  鉄道員(ぽっぽや)   (普通部OB 船津於菟彦)

会社に就職した時に新入社員ながら北海道炭礦汽船の担当者であった。「黒いダイヤモンド」と言われた石炭産業が石油に代わり、エネルギー構造変化をしだのでだったのでこの映画への思い入れも強い。
ストーリーの主人公佐藤乙松(おとまつ)-高倉健-は、北海道の道央(十勝・空知と推測されるが、あくまで架空)にある廃止寸前のローカル線「幌舞線(ほろまいせん)」の終着駅・幌舞駅の駅長である。鉄道員一筋に生きてきた彼も定年退職の年を迎え、また同時に彼の勤める幌舞駅も路線とともに廃止の時を迎えようとしていた。彼は生まれたばかりの一人娘を病気で失い、また妻にも先立たれ、孤独な生活を送っていた。
幌内炭鉱のもじりと思う。幌内炭鉱(ほろないたんこう)とは、北海道三笠市(開山当時は幌内村)に存在した炭鉱。明治12年に北海道開拓使が掘った坑道は当時は大坑道と呼ばれ、その後「音羽坑」と呼ばれるようになった。、石炭層の発見 – 採炭から輸送に至るまで機械化が進められた、日本の近代炭鉱の先駆け的存在。明治期の近代化から太平洋戦争後の復興期まで、縁の下で日本を支えた歴史的に重要な炭鉱の一つである。独立系の炭鉱会社も数社が開発を手がけたが、開発の主力を担ったのは北海道炭礦汽船(北炭)であった。北炭の本鉱の立坑は、海面下1,000mを越える日本最大規模となった。1975年に大規模なガス突事故があり13名の犠牲者をだした。事故後採鉱を再開し、最終的に北炭の生産量は100万トンを越えた。1989年閉山)。小生は此処にも連日鉱山用支保工始め数々の資材を納入する仕事にたずさわって。日本の産業が大きく変わる時であった。石炭産業の没落。日本国有鉄道の衰退。そのな時に仕事に関わり思い出深い。
さて、この映画はまさに高倉健の高倉健の人柄そのものである!また、鉄道員という仕事が何事にも「正確・実直」にするという事を守り抜き最後は吹雪のホームで電車を待つ姿で倒れて——。キャッチコピーは「男が守り抜いたのは、小さな駅と、娘への想い。」「1人娘を亡くした日も、愛する妻-大竹しのぶ-を亡くした日も、男は駅に立ち続けた…」「どこまでも—ぽっぽや」だと死を前にしてつぶやく。生まれた子供が女の子で「ぼっぽや」二代続いたのが続かなくなったなぁと残念がるが、その娘を可愛がるが風邪で早世してしまう。がつかりした妻も高齢者出産のことも在り、矢張り亡くなる。
夫人であった江利チエミもやや同様なことで早世しているが、テネシーワルツといいこの事を含め高倉健に纏わることがちりばめられている。回想シーンはモノクロに近い色で再現され、涙を誘う。そして、所々で江利チエミの持ちうだった「テネシーワルツ」がハミングで流れる。後半に不思議な物語が描かれ、余韻を残す。
3人の少女(佐藤雪子):山田さくや(幼少時)・谷口紗耶香(小学校6年生)・広末涼子(高校生)現代の乙松の許へ、見覚えがある人形を抱えて現れた少女とその姉二人。乙松と同じく「佐藤」と名乗る。正月休みで遊びに来たと話し、乙松は近所にある寺の住職の孫だと思い込んでいたが、住職からの電話で「娘も孫も帰ってきていない」と告げられ、少女が誰であるかを知ることになる。これが亡き娘の成長した姿だったようで「雪女」と絡め何か不思議な心に残るシーンであった。
尚、乙松が駅長を務める「幌舞駅」は、根室本線の幾寅駅を改造して撮影された。ただし、該当駅は終着駅ではなく途中駅であるため、模擬の腕木式信号機や車止めを設置するなど、いくらかの細工が施されていた。本線と幌舞線が分岐するターミナル駅として登場する美寄駅は滝川駅で撮影された。また志村けんは2020年12月公開予定の映画『キネマの神様』に主演予定だったが、クランクインを待たずに急逝したため、本作が生涯唯一の映画出演作となった。脇役であったがなかなの名演技であった。