エーガ愛好会 (147) 軍用列車

僕はあまりテレビを見るほうではないのだが、何となくスイッチオンしてみたらこの映画がちょうど始まるところだった。別に期待もしていなかったのだが、アリステア・マクリーン原作の映画だというので、座りなおした。マクリーンは多作で知られる作家だし、ナヴァロンの要塞 女王陛下のユリシーズ号 をはじめとして主なものはずいぶんと読んだ記憶がある。しかしこのタイトル(原題はBreakheart Hill という)は見たこともなかった。おそらく第二次大戦での抗ナチ活動の話だろうと思っていたのだが、タイトルバックに出てくる機関車がどうみてもセーブゲキ風なので(マクリーンが書いた西部劇?)というオドロキと、クレジット・タイトルにごひいきベン・ジョンスンが出てきたので、意を決して(おおげさかな)最後まで見てしまった。

筋書きはよくある軍の幹部が武器密売にかかわる腐敗もので、たとえば最近で言えばトム・クルーズのジャック・リーチャーもの第二弾 ネバーゴーバック と同じ筋書きだ。ただ、クルーズのほうが万事アクションで追い詰めていくのに、そこはマクリーン、観ていても謎解きに引き込まれるようだった。ただ西部劇時代の話となると、時代考証的に(まあ、いいんだけど)いろいろ疑問が湧く。ウイキペディアにある記事ではサスペンススリラー、と分類していた。

筋書きは辺地でジフテリアが発生したため、医療品と補充兵を運ぶ軍用列車での謎解きである。列車は度々停車し、目的地の砦(すでに悪漢一味に占拠されている)に報告を入れるのだが、当時まだ当然無線は出来ないから、電線に送信装置をつながなければならないはずなのに、画面で見る限り電線が引かれているとは思えない。ジョエル・マクリーンの 大平原 では、二挺のライフルの銃身を電線につないでモールスを送る場面があったが、そういえばあれはどうだったか、も一度DVDを見てみよう。

ベン・ジョンスンは別件で登場するのだが、酒場でお尋ね者として手配されているチャールズ・ブロンソンを見つけ、それを連行するという名目で軍用列車に乗り込む。ところがこの列車、突然兵士を載せた車両が切り離されて逆走、転落したり、殺人があったり、謎が深まっていく。ブロンソンが医療品の箱が実はダイナマイトとライフル銃であることを見つけ、生き残りの中で唯一信用できる将校とともに解決し、密売の相手だった先住民の襲撃を押しとどめる。女性で登場するのはジル・アイアランドだが、まったくのそえものでロマンス話はなし。もう一人、どっかで見た顔だと思ったら、ランボー でスタローンの上司になるリチャード・クレンナだった。

時代考証、という意味でもう一つある。ブロンソンは実は秘密情報部員だ、という事がわかる。待てよ、映画の中に正確な記述はないが、大統領はグラントのころだろう。その当時にすでに CIA のごとき組織は存在したのか? 何方か博識の方、よろしくご教示ありたし。

ま、ぽかんとあいた午後の2時間、退屈はしなかった。