エーガ愛好会 (204)復讐の荒野  (34 小泉幾多郎)

この映画の作られた1950年こそ、名匠アンソニー・マンが西部劇作家として本格的にスタートになった年。この年に、この「復讐の荒野」「ウインチェスター銃’73」「流血の谷」が作られたが、このうち何故か「復讐の荒野」だけが、日本で劇場公開されなかった。大牧場主の父と娘が親子でありながら血で血を争う残忍さが敬遠されたからか。他の2作も異色作で、「ウインチェスター銃’73」名銃が生み出す人間模様を重点に描いたものの父親殺しの弟を倒す復讐劇でもあった。「流血の谷」もインディアン出身の北軍兵士の人種差別問題を扱い、アンソニー・マンの名声が一気に上がった特記すべき年であった。

 原名フューリーズと呼ばれる大牧場主T・Cジェフォーズ・フューストン(ウオルター・フューストン)は広大な土地を所有し、独善的で、TCという地域通貨で取引したり。無許可で暮らす人間も縛り首にする等の専制君主。一緒に住んでいる娘ヴァンス(バーバラ・スタンウイック)も勝ち気な性格。或る日、旅に出たジェフォーズはバーネット(ジュディス・アンダーソン)を連れて帰り、後妻として娘ヴァンスに紹介した。財産目当てのことを察するや、鋏を顔面に向けて投げ付け顔を傷つけるのだった。 父親と娘の対決は、紆余曲折の末、一度別れた娘ヴァンスとリップ・ダロー(ウエンデル・コーリイ)が復讐を完了し、父ジェフォーズは吊るし首にした息子の母親に復讐の銃で撃たれ、死んでしまい、フューリーズは娘ヴァンスのものになった。 骨肉相争う家族の悲劇、暗い画面の中に、色々と入れ替わるが、追いかけること自体もう結構という感じになってしまい、スッキリしない内容になった。

バーバラ・スタンウイックは流石に名女優.ウオルター・ヒューストンは、遺作で最後の名演をみせてくれた。

(編集子)バーバラ・スタンウイックとはまた懐かしく、セーブゲキの古典、ジョエル・マクリーと共演した 大平原 を思い出した。小泉さんの嘆かれるのに小生も同感で、ここのところ放映されるセーブゲキは妙にひねったものが多く、大平原や落日の決闘のような正統派(つまり広々とした背景があって、いいやつと悪いのが決まっていて、必ず正義が勝ち、いいやつのガン裁きがすごい物語で、それに詩的な雰囲気が素晴らしい奴ならさらに良い)が少ない。困ったもんだ。